2012年Jシリーズ最終戦、そして自分にとって最後のMTB公式戦と決めて臨んだシリーズ7戦白馬さのさか大会は自分にとって最も思い出に残るレースとなった。結果は優勝。これ以上の成績がない状態でJシリーズ戦を卒業する事ができた。これまでのたくさんのサポート、応援に心より感謝したいと思っている。
今回の大会に向けてはじっくり調整して大会に臨むというよりはアジア選手権からの勢いを保ちながら大会当日を向かえたというのが正直なところだった。間にはJAPAN CUPを挟んだ事で生活のリズムが整わず、レース前の週は体調が悪く気持ちを前向きにする事でなんとか体調をキープしている状態だった。それでもレースまでの日々は大会での優勝だけを考え、ゴール後の喜びの瞬間を何度もイメージしていった。会場入りは大会前日の土曜日で昨年と変わったコース試走を入念にしていった。また決勝当日は雨が予想されたのでマッド状態になった時の事を考えながらの試走だった。身体は順調に回復傾向にあり、翌日のレースで力を発揮できる身体と心の状態にもっていけた。
大会当日は朝から雨が降り、バイクのタイヤ選択に悩まされた。硬く締まったジープロードが大半を占めるコースながら各所に泥のシングルトラックがあり、どちらを重要視するからで本当に悩んだ。しかもこれが最後のレース、最高のレースをしなければいけないという気持ちが余計に悩ませた。
朝の試走時間の時にはコース状況を見学するためにコース脇を歩いてチェックして回った。そして選択したのはドライからオールラウンドに走れる『IKON』を選択した。泥の区間はテクニックでカバーして、スピードの伸びるジープロードで力を発揮する選択をした。そして、ホイールのスポークテンションをいつもよりも高くして直進時のパワー伝達効率を上げるセッティングにして決選バイクを組み立てていった。すべては最高の走りをするために。
寒い雨の降る中テントの中で長めにウォーミングアップをしていった。そして、スタートエリアに並びスタートの時を持った。嫌な緊張感はなくレースに対する楽しみな気持ちに支配される状態でスタートのカウントダウンを待つ事ができた。バンッ!というピストルの音とともにレースがはじまった。落ち着いてコースインしていき、息を整える形で3番手で進んでいった。周りがマッドタイヤを選択している事を知っていたので、ジープロードや平坦路では自分にアドバンテージを感じながらレースを展開していった。そして1回目のフィードゾーンのあとの砂利道区間で先頭に立ちペースを上げる状態で登り坂に入っていった。心配だったタイヤのグリップも体重移動でコントロールできる状態だったので、先頭を譲ることなくレースは進んでいった。そして、コース中盤のシングルトラックでは他者の走りを見るために3番手で走り様子を見ながら走っていった。そんな時に、まだタイヤのグリップ感覚がつかめていない下りのポイントで一度コーステープをまたぐ形でコースアウトし、先頭2人においていかれる状態になった。その後は先頭には少し離される形で走っていたが、平坦路で一気に差が詰まるのが分かったので焦ることなく2周目で合流した。そこからは積極的に前に出て走り、2周目の長いシングルトラックで先頭にできるとそこからは独走態勢に持っていく事ができた。レース前の事前情報によると泥の長いシングルトラックは乗車しながらでもいけるが、バイクを押していった方が早いとの情報があったので、全周回迷わずバイクを押して進んでいった。そして、それ以外のスピードの乗る区間はギアをかけ、タイヤの優位性を使ってどんどん後続を離していく事ができた。1周で10秒くらいではあったが、後ろがどんどん離れていくのがわかったので、展開的にはとても余裕をもって走る事ができた。そして最終周回。勝った事がわかったのでトラブルを回避しながら冷静に走り、イメージ通りの走りで優勝する事ができた。これまでのJシリーズ戦の中でも一番気持ちの良いゴールとなった。この日のために応援に来てくれた応援団の中で喜びを共有できた事がとても嬉しかった。
この勝利はMTBレースをこの日までと決めて走った事で達成できたのだと感じている。身体じゃない、気持ちで走る事のできたレースだった。自分にとって最高の形でMTBに終止符を打つ事ができた。後悔は何もない。あるのはこれからの期待感とロードで成功するイメージだけである。これまでお世話になった方々へは本当に感謝しています。これまでと変わらない前向きな気持ちを全面に出した活動を来期からもしていきます。引き続き応援よろしくお願いします。