2007年全日本マウンテンバイク選手権大会 レポート

2007年7月24日


大会名2007年全日本マウンテンバイク選手権大会
2007年7月22日
場所秋田県たざわ湖スキー場
競技内容マウンテンバイク クロスカントリー エリートクラス
天候晴れ(コースコンディション ドライ)
チーム名キャノンデール・ディアドラレーシングチーム
使用機材マシン:キャノンデール スカルペル(Sサイズ)
ブレーキ:MAGRA マルタSL
ホイール:MAVIC CROSSMAX SLR
タイヤ:CROSSMARK USTチューブレス(26×2.1)
シューズ:DIADORA TEAMRACER MTB CARBON
サングラス:adidas(supernova)
ヘルメット:BELL スイープR
ペダル:crankbrothers(egg beater 2ti)
バーエンド&グリップ:BBB
チェーンオイル:EVERS PRO "DRY"(carbon chain spray)
マシンケアキット:PEDRO`S
レース結果2位(78人中)

1位:竹谷選手(SPECIALIZED)
2位:山本和弘(キャノンデール・ディアドラレーシングチーム)
3位:千田選手(KHS JAPAN)

レースレポート・・・
約1年半ぶりの表彰台。久々に満足のいくレースをすることができた。去年の開幕戦で2位になって以来、表彰台に絡む走りができなくなっていた。レースを走るたびに悔しい思いをし、笑顔で会場を跡にすることができなかった。それでも、回りのスタッフは明るく振舞ってくれた。それだけが救いだった。
 

「一度走れなくなると、走れる自分を想像できなくなる。」そんな2006年だった。悔しくて、苦しくて、そんな気持ちで2006年のシーズンは幕を閉じた。シーズンが終わった時は翌年の明るい自分を想像できなかった。しかし、その年の終盤、ロードのステージレースでアフリカの大地を走ることができた。そこで様々な人種の選手とともに戦い、ともに生活していくうちに、「なりたい自分」を見つける事ができた。「本気で楽しめる事。」
それが自転車だった。自転車が好きで好きで仕方がなかった少年時代。それを思い出した。
帰国後、「なりたい自分」になるため、生活環境を変え、新たな生活をスタートさせた。自分に素直な気持ちがこの行動を後押しした。そして、2007年。新たな環境、新たな練習パートナー、新たな気持ちで、トレーニングに集中した。すべてが新鮮だった。すべてが楽しかった。自分が自然でいられる環境がうれしかった。

そして、2007年のレースシーズンが始まった。しかし、シーズンが始まり、レースが続くようになると、僕の身体に「腰痛」が襲ってきた。それまで、どんな事でも対応できていた僕の身体は、全く言う事をきかなくなっていった。
練習もうまくできず、調整のために出たロードレースでも、思うような走りができなかった。それが、全日本の1ヶ月前である。
焦る気持ちが、悪循環を生んでいた。このままでは、いけないと基本に戻る事にした。まずは、自転車のポジション変更に始まり、生活リズムの改善、そして、無駄を省いた練習内容へと変化させていった。すると、嘘のように「腰痛」は治り、以前の集中力が戻ってきた。

それからは、低い強度の乗り込みをし、全日本に向けて、徐々に強度を上げていった。その期間、「強くなりたい!」と思い続けているチームメイト達が、僕を勇気付けてくれた。
そして、天候も梅雨で気温が低く、毎日集中する事ができた。すべてが順調だった。
しかし、レースまで2週間という時に、5年間も一緒にやってきたメカニックが急に辞めてしまうという悲しい知らせがあり、大きなショックを受けた。
僕のすべてを知っているメカニック。僕を様々な角度で育ててくれたメカニック。僕の自転車活動の大きな力となってくれたメカニック。そんな彼がいなくなったことは、本当にさみしかった。しかし、彼がいなくても、僕は僕でいられるし、僕が続ける事でまた一緒に同じものを追いかけて行けると思った時、今まで以上の勇気が出てきた。それからの練習で、追い込むたびに、この事が頭から離れなかった。「いなくなって気づく、彼の大きさ。」僕は5年間も気づけなかった。「ありがとう。」は走りで表そう。僕はそう決めた。

そして、レース当日。様々な事があった1ヶ月だったけど、やれることはすべてやった1ヶ月。レースを走るのが楽しみで仕方がなかった。


僕のレースは13時30分から。この日は10時半には会場に入り、準備を進めた。11時5分からの僕の弟のスタートを見て、心の底から盛り上がる事ができた。弟のレース展開を見渡せる駐車場で、アップを開始し、弟を応援しながら、身体を温めていった。正直、弟のレースは最高だった。物凄くカッコよかった。日本一の走りだったと思う。僕は興奮した。

レースのコースは1周6.5kmで、アップダウンのバランスが良く、下りはほとんどがシングルトラックで、テクニカルな箇所が多く「THE MOUNTAINBIKE!」を感じさせる最高なコースだった。僕の出場するエリートクラスは、このコースを6周で行われた。

スタート位置は、1列目の真ん中。最高なスタート位置であった。「勝つために走る!」そう決めてスタートラインに並んだ。すべての集中力をスタートにかけた。そして、予定時刻に「バンッ!!!!!」。レースが始まった。大きな深呼吸とともにペダルに力を込めた。「ウニョ???!!!!!」と加速していった。
はじめの登り坂でも、落ち着いて走ることができた。回りをしっかり見渡せたし、集中して走ることができていた。登った後の下りでも、下りの上手な選手のラインを盗み、次周回に備えた。1周回目。前に2人が抜け出す形で、それを確認できる範囲で走った。順位は5位。息は上がるがその分、力も湧いていた。前とは30秒差くらい。追うか、そのままキープか迷ったが、前は登りのスピードが自分のペースより速かったので、このままで行くことを決めた。
1周目は5位で通過。差は30秒前後。まだ見えた。2周目はじめの登り。少しペースを上げて登ってみる。順位は3位に。一緒に走っていた選手は下りが速いので、先に行かせてくれたのだろう。僕は先に行くしかないので、ズンズン登っていく。下りも、先程のラインでスムーズに走行。下りでは、少し差は縮むが、追いつかれるほどではなかった。だから、登りは自分のペースでいった。前は見えた。でも、あのスピードで行くと後半でペースダウンする恐れがあったので、ガマンして走った。今まで、自滅する事が多かった僕なので、自分を大切にして走った。走り方も、ケイデンスを上げた走りと、下げた走りを使い分け、身体のダメージの分散化に気を使った。
そうしているうちに、ランナーズハイ状態にスイッチオンした。「このままいけば、必ずチャンスは来る!」このように考えられる余裕ができてきた。しかし、トップとの差はひらいていき、2分弱まで広がった。どうする、追うか、追わないか。

そんな時、登りの頂上で教えてくれるタイムと、下った後のタイムでは差が縮まっている事に気がついた。だから、登りは限界スレスレのスピードで登り、下りを攻めて走った。「これしかない!」そう思った。だから、その走りを続けた。下りはミスなくいけるし、集中して走ることができた。そして、2周目終了。3位で通過。差は2分弱。3周目へ。気温はどんどん上がって、太陽光が熱く感じられた。だから、フィードゾーンでは水を身体中にかけ、体温上昇を最小限にした。そして、水分補給も意識的に、より効率的に摂取していった。チームより、事前に様々な補給の知識を指導されていたので、それを忠実に実行した。3周目、途中2位を走っていた選手がメカトラで止まっているのを確認する事ができた。

「よしっ!チャンス到来!!!」。と、気持ちが盛り上がってきた。そのため、2位に浮上した。この時点でトップとは2分半の差。「はやいなぁ?」と思いながら、自分のペースを維持し続けた。3周目を2位で通過。4周目、自分の走りを心掛けた。コース脇では、弟が様々なポイントに移動して応援してくれた。「苦しいのは当たり前!皆同じだ????!!!!」と。応援されるたびに「元気100倍!!!!!!!」な感じになった。4周目も2位通過。5周目に突入した。5周目、コース中1番長い登り坂で追いついてくる選手がいた。いきなりだったので、驚いたが、冷静に対応した。一時抜かれるが、抜かれる前に体力を温存して走っていたので、抜かれた時に合わせて走ることができた。その選手と比べた時に、僕の方が下りでアドバンテージを感じていたので、下りの直前でペースアップし、引き離しにかかった。5周目終了時点でトップとは4分差。後ろとは30秒差くらいだった。6周目。ラストラップである。6周目はありったけの力で走った。登りも全開。下りも全開で走った。途中、足が攣る事もあったが、そんなのお構いなしで、走り続けた。ゴールまでの距離が近づくにつれて、自分自身がワクワクしていくのがわかった。コース脇では、知り合いが「ワァァァ???!」と喜んでいてくれた。僕も自然と笑顔が出てきた。そして、ゴール。久々に笑顔でゴールすることができた。うれしかった。出し切った。安心した。それがゴール後の思いである。

優勝はできなかった。レース中、優勝をあきらめたわけではなく、自分の走りに徹した。最終的に5分の差がついたが、これがチャンピオンとの差だと受け止めたいと思う。「2位で喜ぶんだぁ?」と思うかもしれない。しかし、僕自身、心の底から喜べるので、人になんと言われようが構わない。「うれしい。」その気持ちに嘘はない。ずっと、表彰台に立てなくて、立ちたくて、頑張ってきたから。そして、満足いく走りができなかったから。この2位という成績は「うれしい。」

やっと、走れる身体を手に入れた今。やはり「欲」が出てくる。それは「優勝」という最高の喜び。簡単ではないから、頑張れるんだよね。

同じ環境でも、「限られた環境」と見るか、「恵まれた環境」と見るかは、その人次第だと思う。僕は、最高に恵まれた環境にあると思うので、全力でこれからも頑張っていきたい。そして、言い訳だけはしたくない。「うれしい。」時は、素直に喜びたい。カッコつけたってカッコ悪いもね。

今回の2位は、本当にうれしいです。そんな2007年全日本MTB選手権大会でした。


ここまで、僕を見放さないで応援し続けてくれたみなさん、本当にありがとうございました。そして、会場で、応援・サポートを全力でやってくれたスタッフに感謝します。

これからも、走り続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。

キャノンデール・ディアドラレーシングチーム  山本和弘


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